ほうかご百物語

ほうかご百物語 (電撃文庫)

ほうかご百物語 (電撃文庫)

 第14回電撃文庫小説大賞<大賞>受賞作、ほうかご百物語
 躍動感溢れるものなら何でも書きたがる美術部員の白塚真一が、妖怪のイタチさんと妖怪研究家の経島先輩と一緒に、次々と妖怪を退治していく物語。
 妖怪退治が中心に置かれていることもあり、イタチさんが炎を出して戦う場面がありますが、派手な戦闘はなく、基本的にコミカルな展開で物語は進行していき、真一のバカっぷりを見てニヤニヤ、イタチさんが照れるところを見てニヤニヤと、終始ニヤニヤっしぱなしの作品です。ただ、非常に手堅い作品と言いますか、面白いと言えば面白いのですが、これ、スゲェ面白いよ! と感じるほどではない。
 続編が次々と出せそうな作品ではありますが、同時にマンネリ化も早く起きてしまいそうな作品だと思います。個人的には、金賞受賞作の「君のための物語」の方が好きだなあ。

征服娘。

征服娘。 (スーパーダッシュ文庫)

征服娘。 (スーパーダッシュ文庫)

 有力貴族の娘として生まれたマリアが、自由を手にするために、親友のアッシャと謀略渦巻く政界でのし上がっていこうとする話。
 有力貴族の出身だけあって、資金面では恵まれた環境にあるマリアが、一家の力を借りずに自分の力だけで、警察長官や自分の一家と敵対している貴族と盟約を交わしたりする展開は読んでいて面白かった。次兄との商売対決は、マリアにとって都合のよい形で終了しましたが、まあ、こういったシリーズの第一巻は、大体主人公たちにとって都合のいいように物語が進むものですし、大して気になりませんでした。
 ただ、ラストはさらっと流す形で終わってしまいましたし、物語に山場がなかったことが非常に残念。この巻で盛り上がったというか、一番どきっとした場面を挙げるならば、マリアが自分にとって最大の障害が自分の父親と気づいたときに、「殺すわ」と平然と言い放ったところでしょうか。自分の自由のために、そこまでするかという気もしますし、それぐらいやらなくちゃ面白くないという気がしないでもない。
 この巻では、マリアに味方する人間が増えていきましたが、これからはマリアのことを潰そうとするライバルもたくさん出てくるでしょうし、そのときマリアがどう行動していくのか楽しみです。とりあえず、二巻は戦争の様子が描かれそうなので、実際に血が流れる場面を見て、マリアがどう感じるのか期待していたいと思います。

君のための物語

君のための物語 (電撃文庫)

君のための物語 (電撃文庫)

 第14回電撃小説大賞<金賞>受賞作、君のための物語。
 物語の内容は全く違うのですが、題名を初めて見たときは、アメリカでベストセラーになった「きみに読む物語」を思い出しました。心温まるヒューマンドラマという点では、一緒なんですけれどね。
 昨年の「ミミズクと夜の王」のように、最近の電撃文庫ライトノベルらしからぬ作品を発掘することに躍起になっているように感じるのですが、この作品も実にライトノベルらしからぬ作品だと思います。ライトノベルっぽい点を挙げるなら、主人公である「私」が驚いたときに「ぬはぁ!」と叫ぶところぐらいじゃないでしょうか。
 第一章の序盤なんて、「私」とセリア、奇妙な青年レーイの三人の会話だけで進行し、レーイの奇妙さが際立つものの、物語の展開としては、かなりスローペースな感じがしました。でも、文章力があるせいか読みづらい点はなく、第一章を読み終わると、第二、第三章とどんどん物語の中に引き込まれていきました。そして、エピローグを読み終わった瞬間、「私」とレーイの関係の変化に思わずニヤリと笑ってしまいました。まさか、レーイに可愛げを感じる瞬間がこようとは、夢にも思わなかったなあ。
 面白いというよりは、読んで良かったと思える作品だったように感じます。ただ、完成度は高いのですが、エンターティメント性から見たら地味な作品なのかもしれません。
 

ミスマルカ興国物語

ミスマルカ興国物語〈1〉 (角川スニーカー文庫)

ミスマルカ興国物語〈1〉 (角川スニーカー文庫)

 同じ文庫で二作を同時連載するのは、結構珍しいケースなんじゃないでしょうか。林トモアキさんの新シリーズ、ミスマルカ興国物語
 戦記小説なのに戦闘シーンがないとは、これいかに。
 物語の展開は、国民からボンクラと呼ばれている王子が、大国の急襲から自分の国をハッタリだけで守るというもの。
 口からの出まかせだけで、帝国の姫を退ける展開は読んでいて面白かったし、お・り・が・みやマスラヲとの関連がありそうな部分があって、笑える部分もあったし、シリーズの滑り出しとしては上々だと思います。
 ただ、主人公のマヒロは目立っていましたが、他のキャラが微妙。近衛騎士のパリエルやメイド長のエーデルワイスなど、それなりに目立つはずのポジションにいたのですが、影が薄かったように感じます。まあ、それだけマヒロのキャラが立っていたということなのでしょうが、シリーズとしてやっていく上では、マヒロの魅力だけで引っ張っていくのは難しいのではないでしょうか。
 異色な戦記小説として楽しめそうな気もしますが、二巻以降の展開を読んでみないと何とも言えない感じがします。

2007年下半期ライトノベルサイト杯結果発表を見て

 新規部門で五位圏内に読んでない作品は暴風ガールズファイトさよならピアノソナタ、ドアーズの三作。あと、気になったのがカッティングですかね。
 既存部門は既読のものが多く、上位で読んでいないのはFate/Zero流血女神伝ぐらいでした。個人的には、世界平和は家族団欒のあとにが、それなりに票を集めたのが嬉しかったですね。早く、続巻出ないかなー。
 新規部門に関しては読んでいない作品が結構あったので、卒論発表後の楽しみにしたいと思います。既存部門は読むとしたらFate/Zeroだけかなあ。流血女神伝は一巻以降読んでいないので、今から全部買うのは金銭的にキツイです。
 
 最後になりましたが、運営に関わった方々、そしていつも告知と企画をしてくれるid:kim-peaceさん、本当にありがとうございました。

 大学からの帰宅途中、土曜なのにやけに学生が多いなあと思ったら、センター試験があったんですね。旧帝大に入るためには八割必要だとか、自分は私立に行くから関係ない、と会話している学生たちの話を聞いていると、全然関わりがない人たちなのに、自分も四年前はこんな感じだったのかなあと親近感がわいてきました。結局、自分はセンターは目標ラインを突破できたのですが、二次試験で失敗してしまったので、第一志望校は落ちてしまいました。まあ、上京した際に、試験前日に勉強せず、池袋や新宿の本屋を歩き回って地元には置いてなかったラノベを大量に購入していれば落ちて当然だったのではないかなあと思います。
 卒論発表まであとわずかですし、頑張っていきたいなあ。

ウェスタディアの双星

ウェスタディアの双星―真逆の英雄登場の章 (電撃文庫)

ウェスタディアの双星―真逆の英雄登場の章 (電撃文庫)

 これは期待できる!
 発売前は、購入する予定は全くありませんでしたが、他サイトの方々の間で評判が良かったので購入してみました。それで読み終わった後に気がついたのですが、この本って、お留守バンシーシリーズの作者さんの新シリーズだったんですね。前シリーズとは、全く毛色の異なるジャンルだったので、こういう話も書けたのかと、素直に驚かされました。
 さて、戦記モノの醍醐味と言えば、個人的に弱小国が大国に挑む展開だと思っているのですが、そういった意味では、ウェスタディア勢の現状は戦記モノとしては理想的な始まりだと思います。王の死後、後を継ぐはずの王子は、王位継承権を破棄して亡命するし、宰相や軍の上層部ですら、保身に走って国を逃げ出してしまいます。そんな状態から、商人出身のチェザーリが先王との義理を果たすために、王家の血を引くルシリアを捜していく展開は、まさに国興しという感じがして良かったと思います。
 まあ、国興しの部分は、結構速いテンポで消化されていってしまいましたが、他国から攻め入られて、戦争が始まったあたりから、かなり面白くなったと思います。
 うーん、主人公が誰かあやふやだったり、SFが舞台で戦艦が出てくるのに国々の技術力差が書かれていなかったりと、気になるところも多いのですが、丁寧に話が練られているためか、今後が期待できる面白さと言いますか、読み終わった後に、ルシリアが女王として成長していく姿や、チェザーリが外交で手腕を振るう姿、バドエルやアルフォーニが戦艦を率いて戦っている場面が、不思議と読みたくなってくるんですよね。シリーズの幕開けとしては地味かもしれませんが、うまくいけば長期シリーズとして続いていくのではないでしょうか。
 次の巻も購入決定、と。