文学少女と神に臨む作家(下)

 『本の表紙を開けば、そこで誰かの想像に出会うことができるわ』とは、作中の遠子先輩の言葉ですが、シリーズ最終巻を読み終えた今、本当にこのシリーズに出会えて良かったなあという気持ちで一杯です。作中の登場人物を題材で扱っている本の登場人物とかぶらせる演出も、毎回誰がどの役に当たるのか考えながら楽しめましたし、遠子先輩の本好きには毎回笑わされました。

 思えば、太宰治人間失格からスタートしたシリーズでしたが、それぞれの巻で遠子先輩がやってきた役を心葉が受け継いだ場面は、本当に良かったなあ。特に心葉の最後の決意は、このシリーズの全てを集約した上で、明日に向かっていこうとする場面は、最高です。

 誰がジュリエットで、誰がアリサなのか。
 狭き門とは、本当に絶望的な解釈しか生み出さないのか。
 心葉にレモンパイを焼いてあげていたのは誰なのか。

 ラストまで予想が裏切られっぱなしでしたが、最後のページを読むと、登場人物たちの今後に幸いあれと願わずにいられません。

 好きなシリーズが終了してしまうのは残念なことですが、野村美月先生の今後のご活躍を楽しみにしていたいと思います。