沙漠の国の物語〜風はさらう

沙漠の国の物語―風はさらう (ルルル文庫)

沙漠の国の物語―風はさらう (ルルル文庫)

 第一回小学館ライトノベル大賞ルルル部門大賞受賞作の続巻。
 ルルル文庫の狙いが女性層に絞られているせいなのでしょうか、いきなり恋愛要素が強くなった気がします。まあ、一巻の最後にも、ラビサとジゼットの気持ちの変化を仄めかす部分があったので、予想できる展開ではあったのですが、最近のライトノベルの中では珍しいほど早く展開が進んだので、びっくりしました。
 さて、今巻の内容ですが、一巻が冒険小説とすると、今巻は戦記小説に近い感じがします。カヴルと砂嵐の町タラスファルの間で、協定が結ばれていくところに、砂嵐旅団の残党が介入していく展開は、読んでいて面白かったです。平和的解決を求める一方で、真相を明かすことを恐れる派閥がありましたし、その派閥を利用してカヴル転覆を狙う一派が出てくる――こんな感じで、色んな主義、主張を持った組織が複雑に絡んでくる話は好きなんですけれど、はっきりとした悪役がいなかったのがもったいなかったなあと思います。一巻では、カヤルという悪役が存在していましたが、今回、カヤルはジゼットに構いっきりだったこともあり、カヴル転覆を狙う一派を支える主要キャラがいないせいか、カヴルに危機が訪れる場面でも、あまり緊迫した雰囲気を感じませんでした。
 ラストのラビサの演説には、胸が熱くなったりもしましたが、個人的には一巻の方が好きだったなあ。まあ、今回は決着をつけなければならない部分が多かったので、仕方がない面もあるかもしれませんが、ラビサの魅力が十分に発揮されてなくて、残念でした。でも、そういった意味では、今巻のラストで、シリーズ化への布石が打たれたのは良かったと思います。
 やはり、ファンタジーの醍醐味と言えば旅です。一巻のように、ラビサの魅力的な部分が発揮されることを期待したいと思います。