＜本の姫＞は謳う

“本の姫”は謳う〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

　デビュー作の煌夜祭以降、一年間音沙汰がなかったので、もう新刊が出ることはないのかと半ば諦めていただけに、新刊が出ると知った時は嬉しかったなあ。
　うーん、煌夜祭の重苦しい雰囲気と違って、冒険談のような明るい始まりでしたが、物語の流れは煌夜祭と同様に、現在と過去が複雑に絡み合う物語になっていきそうです。現在は主人公のアンガス、過去では「俺」なる人物の視点を通して物語が進んでいくのですが、煌夜祭では語り部たちの接点が予期できなかったのに対し、この巻では、アンガスと「俺」の世界の接点がはっきりと与えられているので、「俺」の過去で起こった出来事が、後々アンガスたちにどのように関わってくるようになるのか楽しみです。
　また、煌夜祭では、これといった主要キャラが登場しませんでしたが、このシリーズでは、主人公のアンガスをはじめ、普段は高飛車なくせにアンガスの身に危険が迫ると神経質になる姫や、弟は有名な賞金首なのにヘタレなジョニーなど、個性豊かなキャラが活躍している分、面白みがあって良いと思います。
　後がきによると、全四巻ということですが、煌夜祭では、ラストにいきつくまでの流れが非常に面白かったので、このシリーズにも期待していきたいと思います。