扉の外

扉の外 (電撃文庫)

扉の外 (電撃文庫)

 「地球で核戦争が始まってしまいました。人間という遺伝子をつなぐため、あなたたちは宇宙船で地球を脱出することになったのです」
 眠りから覚めた紀之の目に入ったのは、ソフィアと名乗る人口知能の姿だった。ソフィアは、紀之たちに彼らがどのような状況に置かれているかを説明し、宇宙船内でのルールを告げていく。
 曰く、腕輪を外さず、部屋の外に出ないかぎり身の安全は保障する。
 曰く、一日に収入が二回与えられ、収入をどのように使うかはプレイヤーの自由。ただし、画面上の丸を破壊された場合は、収入がゼロになる。
 曰く、暴力行為には罰則が与える。
 だが、説明の途中にもかかわらず、束縛されることを嫌う紀之は、ソフィアの忠告を無視して腕輪を外してしまう――


 第13回電撃小説大賞<金賞>受賞作「扉の外」


 序盤は、一体、誰が、どんな目的で紀之たちを密室に閉じ込めたのか、というミステリアスな展開に引き込まれたし、読んでいて面白かった。紀之がクラスの中で徐々に孤立していく場面も丁寧に書かれていたし、紀之の心情も理解することができた。
 でも、物語の結末が精神的な解放になるとはなあ。いや、序盤から紀之がどこのクラスでも馴染めなくて、今の状態が自分の家庭と一緒だと吐露したり、自由になりたいと言っていた場面があったけど、黒幕を暴いたり、もしくはゲームから脱出する、という展開を期待していた自分にとっては、納得のいくゴールではなかった。
 結局、黒幕の正体も分からないまま、唐突に物語が終了してしまったし、消化不良な気分だ。
 たまには、風変わりな作品を読んでみたいと思う方は買ってみるのもいいと思いますが、他の人にはあまりお勧めはできません。