ユーフォリ・テクニカ

 「水気」を利用した技術が応用開発されはじめた時代、多くの研究者たちが富や名誉のため、または自分の好奇心を満たすために「水気」の研究に没頭していた。幼い頃に花火に魅せられた叡理国の王女エルフェールもまた、王立技術院で「水気」の技術を学ぼうと志す一人だったが、女に研究者が務まるわけがないと言われ、悔しさに身悶える日々をすごしていた。そんな時、彼女は王立技術院に東洋からネルという新しい講師が招かれることを耳にする。エルフェールは、早速ネルに自分を研究室に配属してくれるように頼みに行くが――
 
 こういう雰囲気の物語は好きだなあ。産業革命の時代を背景にしているのだろうけど、新しい発見や夢に向かって生きていた人々の姿がうまく書かれていたと思う。
 特に、主人公であるエルフェールは本当に活き活きとしていて、読んでいて面白かった。ネルに感情の波が激し過ぎると言われる通り、エルフェールはちょっとしたことで怒ったり、泣いたり、喜んだりと、表情や態度がコロコロと変わるキャラだった。ネルの研究室に配属して欲しいと直訴した時は、「奴隷として扱ってくれても構いません!」と土下座までしたくせに、次の章では怒りに身をまかせてネルの首を締め上げたりしていた。
 ネルが倭人だから、エルフェールが女だから気に食わないという理由だけで色んな妨害が入る場面があったけど、どんな苦境に立たされようと、自分の研究課題に打ち込むエルフェールの姿は読んでいて楽しかったし、胸が熱くなるシーンもあった。
 でも、それだけに終盤の展開が非常に残念だった。ページ数が足りなかったというのもあるだろうけど、ネルがエルフェールに対して「お前の発想力に期待しているよ」という台詞がありながら、最終的な発想を思いつくまでの過程が書かれておらず、大会当日に研究の結果が明かされる形になってしまった。もちろん、理系用語で、その発想に至るまでがどんなに難解であるかを説明されるのも困ってしまうが、欲を言えば、その発想を思いついた時のエルフェールの喜ぶ姿が読みたかったなあ。
 まあ、不満があったのは、その部分だけでしたし、物語の雰囲気が良い作品だったので次巻も期待して待っていようと思います。
 

 追伸
 後書きのブラジャーネタは、最初は意味が分からなかったけど、よくよく考えたら至極当然のことだった。そりゃあ、つけるとか、つけ忘れるとかあったら大問題だ!