天使のレシピ

天使のレシピ (電撃文庫)

天使のレシピ (電撃文庫)

 第12回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作、天使のレシピ
 この作品が出版されたことで、ようやく今年の電撃小説大賞を受賞した方々の作品が出揃ったわけですが、この作品は、読んでちょっとビックリしました。
 まあ、何と言いますか、天使の設定とか物語の雰囲気とかが、しにがみのバラッドに非常に似ているのです。
 ただ、しにがみのバラッドの方では、死神のモモや相方のダニエルのキャラがしっかりとしていて、本当は関わってはいけない人間達の日常に、モモやダニエルが少し手を貸す形で活躍しているのに対して、天使のレシピでは、題名に天使とついているわりに、天使は全く活躍しないのです。
 それぞれの章の始めから終わりまで、恋に悩む学生達の行動で占められているのですが、天使が登場するのは各章の最後の数ページほどで、「あなたは大事なものを落としていたんですよ」って事の当事者に羽を渡す事で万事解決! と、今まで学生達が思い悩んでいたのは何だったのかと思うぐらい納得のいかない形になっています。「超告白」や「恋愛実験」では、結局天使は何もしませんでしたし、天使の存在意義が全く伝わってきません。
 後書きによると、出版に当たって何本か作品を書き加えたらしく、応募当時の作品がどういったものだったか分かりませんが、「超告白」や「恋愛実験」は面白かったですし、テンポの良さとかで受賞が認められたのかなあと思ったりしています。
 なんか、スニーカー文庫でも同じ印象の作品がありましたが、天使とか無理な設定はいらないから、この作家さんは青春小説を書いていけばいいような気がします。


 とりあえず今年の電撃小説大賞は僕の中で、
 狼と香辛料>お留守バンシー>火目の巫女>天使のレシピ、の順で決まりました。