病院を退院した里香は、裕一と同じ高校に通うことになった。初めての体験ばかりに浮かれる里香に対し、裕一は嬉しくもあり、不安でもあった。
 手術が成功したとはいえ、里香の体は、いつ異変が起こってもおかしくない状態なのだ。
 だが、不安がる裕一をよそに、時間は確実に流れていく。
 里香はクラスで一悶着を起こし、悪友の山西は進路で悩んでいた。
 そして、司とみゆきは――
 夏目と亜希子は――
 
 “僕たちはこの小さな町で寄り添って生きていく”


 それぞれの新しい生活を描いたシリーズ最終巻!


 と、ついに半分の月がのぼる空シリーズも終わりを告げました。
 6巻は、5巻のエピローグ的な話です。ただ、病院を退院した里香と裕一の日常を書いただけの本です。
 あとがきで橋本氏が書いている通り、確かに司とみゆきや、夏目と亜希子の話は蛇足なのかもしれません。
 でも、僕はこれはこれで良かったのじゃないかなあと思います。
 伊勢に残る裕一の心の葛藤を書くには、伊勢から旅立っていく人達のことを書かなければいけないでしょうし。まあ、恋愛要素はいらなかったかもしれませんが。


 さて、負け犬や勝ち組といった単語が飛び交うようになった昨今ですが、裕一も物語の中でかなり悩んでいます。
 伊勢から旅立っていく友人達を見て羨ましいと漏らしたり、自分の現状をカッコ悪いと発言する場面があります。
 しかし、裕一は、最後にこれで良かったんだと笑います。
 もしかしたら、後に裕一は後悔するかもしれません。世界よりも一人の女の子を選んだことを後悔するかもしれません。
 でも、もし、裕一が笑った瞬間に、勝負の世界というものが成立するならば、裕一は彼が立っている土俵の上で確かに勝ったのだと思います。

 僕はこの瞬間を見るために、このシリーズを読んでいたんだなと思いました。変哲もない毎日を手に入れた裕一をぜひ見てやってください。

 最後になりますが、読み続けていて本当に良かったと思えるシリーズでした。