電蜂 DENPACHI (富士見ファンタジア文庫)

電蜂 DENPACHI (富士見ファンタジア文庫)

 第17回ファンタジア長編小説大賞<特別賞>受賞作の電蜂、毎年新人の方々の本は必ず読むようにしているのですが、この作品は凄い、凄いです!
 何が凄いかというと、この作品がファンタジア大賞で受け入れられたというのが凄いのです。

 同じく、第17回ファンタジア長編小説大賞で賞を受け取り、夏ごろに発売された紅のルビーウルフや七人の武器屋、琥珀の心臓だけでなく、近年のファンタジア長編小説大賞の中でも、電蜂はかなり異質な小説だと思います。

 今までの作品なら、作品の途中から暗く陰鬱になる場面があったとしても、物語の最後には必ずハッピーエンド、もしくは何かしらの救いがある感じで終わっていたのに対し、電蜂は最初から最後まで暗く、そして全く救いがないのです。

 正直、読み終わった後は、背筋が寒くなりました。この小説は怖いです。

 小説の締めといい、淡々と書かれていた文章も、実はこの小説に対して恐怖を抱かせるための演出だとしたら、電蜂という作品の魅力は、この小説を読み終わった後に発揮されるものなのだと思います。

 欠点を挙げるなら、主人公達が参加しているゲームをクリアする条件が、レベル100に到達してラスボスと戦って倒すというものなので、話が飛び飛びになっているという事でしょうか。
 作者の方が、後書きでこの作品には特に決まった主人公がいないと言っているように、話の視点が変わる事が多いので、ちょっと読みづらいです。

 まだマテリアルゴーストと逆襲の魔王は読んでいませんが、電蜂のように強烈な印象を残す作品はないと思います。

 続刊が出るかは分かりませんが、次の作品が発売されたら即チェックしたいと思います。