世界平和は一家団欒のあとに(3)

 こりゃあ化けたわ。
 悪のロボット騒動からしばらく経ち、柚島さんとちょっとずつ良い関係になっていた軋人の前に、エルナと名乗る女性が現れる。エルナは軋人の両親の知り合いで、魔法の実験中に軋人の世界に飛ばされてしまったのだと説明する。最初こそ、エルナのことをうさんくさく思っていた軋人だったが――
 と、今巻では、ちょっと気になっていた女の子といい雰囲気になりかけていた時に、別の女が現れて、微妙な三角関係が形成されるという実に王道的な展開が繰り広げられるわけですが、これがまた凄いのなんのって。
 二巻の時にも感じたことですが、この作家さん、ベタな展開でも読者を飽きさせずにラストまで持っていく技術力がかなり高いと思います。ギャグから突然シリアスに切り替わった父親の姿とか、エルナが時々見せる暗い影とか、伏線の張り方がもうウマイとしか言いようがないです。
 今巻のラストでも思わず、ニヤリとするシーンで終わっていましたし、次々とあふれ出てくるアイディアには本当にビックリさせられます。
 デビューした時は、面白いけど地味、という印象しか残らなかった作品でしたが、今では今年の新人さんの中で一番期待できるシリーズだと思います。
 いやあ、すげえ面白かった!