携帯電話俺

携帯電話俺 (ガガガ文庫 み 1-1)

携帯電話俺 (ガガガ文庫 み 1-1)

 ラスト、軽っ! 扱っているテーマが深刻なわりに、最後は家族愛で決着をつけるし、エピソードも葬式なのに、何故か皆明るいし、友人が死んでいるのに「そうですね」、「確かに」とか簡単に相槌をうてる場面ではないと思う。
 あと、主人公が冷静すぎるというか、物分りが良すぎるところが、どうも好きになれないんだよなあ。自分が生きてきたと信じていた二十年を否定されても、あっさりと受け入れてしまうし、自分の命が他人の手にかかっているのに、焦ったり、怒ったりしないのはなあ。まあ、この作品がカフカの変身を真似していると考えると、主人公の冷静さもある程度納得がいくのだけれど、もう少しなにかしらの葛藤があっても良かったと思う。
 相手が魔術師ならば、主人公の思考が勝手に聞こえてしまうところは、キャラによって反応が違っていて面白かったんだけどなあ。
 うーん、カフカの作品である変身を、虫ではなく携帯電話でやる発想は面白いと思ったけど、物語全体の軽さが目立ってしまって、なんだか勿体無い作品だったなあ。