沙漠の国の物語

沙漠の国の物語―楽園の種子 (ルルル文庫)

沙漠の国の物語―楽園の種子 (ルルル文庫)

 第一回小学館ライトノベル大賞ルルル文庫部門大賞受賞作。
 面白かった! うん、新人の方にしては凄く無難な造りの作品でしたが、面白かった!
 ラピザが外の世界を知ることでカヴルの負の部分に触れて傷ついたり、仲が深まるにつれてジゼットがラピザを利用していることに苦悩する展開は、王道的というか、物語のパターンとして何度か見たことがあります。でも、パターン化されたものと分かっていても面白いと思えたのは、主人公であるラピザが凄く魅力的なキャラだったからだと思います。
 女なのに男言葉で話すところが個人的にはツボだったんですが、たとえ落ち込んでも、悩んで、怒って、泣いて、最後には笑って相手のことを許せてしまう芯の強さは、読んでいて心地良かったなあ。特にラピザがジゼットに対して泣きながら怒る場面は、ラピザの特徴をよく表しているものだったと思います。 
 砂嵐旅団とは決着つかずのまま終わってしまいましたが、ラピザとジゼットの旅を丁寧に書いているからこそ、ラピザがイフリートと契約を交わすところや、二人のラストシーンが活きてきた感じがしましたし、読み終えた後にとても清々しい気分になりました。
 ファンタジーとしてはちょっと物足りない点もありましたが、登場人物たちを魅力的に書けるのは、これから凄くプラスになっていくんじゃないでしょうか。続編が出るかは分かりませんが、次も期待して待っていようと思います。