扉の外(2)

扉の外〈2〉 (電撃文庫)

扉の外〈2〉 (電撃文庫)

 今年の電撃文庫新人賞の中で、一番早く続編が出たシリーズの第二巻。まあ、二巻といっても主人公は交代して別のクラスの様子を描いているので、この巻には紀之は登場しません。
 前回は主人公の紀之が集団から抜け出す度に、それまでの展開もリセットされている感じがしましたが、今回は場所が固定されていたし、ゲーム自体も画面上ではなく、プレイヤー同士が接触できる位置にいたので緊迫感があって面白かったなあ。ゲームに負ければ生活の要である腕輪が外されるということで、生徒同士で互いを疑いはじめ、恨み、妬み、弱者を見つけて攻撃するドロドロの展開も良かったと思う。
 物事を冷静に見極めようと常に感情を殺していた高橋が、最後に感情を爆発させるまでの流れもしっかりと作られていたし、ラストシーンでは一巻よりもはっきりとしたカタルシスが味わえたと思う。人によっては毒気が抜かれてつまらなくなったと思うかもしれないですが、個人的には分かりやすい方が好きだし、良い展開だったと思います。
 ただ、クラスに三十人もいて、まともに思考できるのが二、三人しかいないのはおかしいと思うし、誰も自分たちが閉じ込められていることについて疑問に思わなくなってしまっているのは、物語の展開上、高橋にとって都合が良すぎる気がしましたし、そこのところが少し残念だったなあ。
 まあ、これからもシリーズとして続いていくようですし、黒幕についても刊行が進めば、徐々に明かれていくことになるでしょう。一巻のぶつぎり感は今でも好きになれませんが、今回は面白かったと思います。