クジラの彼

クジラの彼

クジラの彼

 いい年した大人が活字でベタ甘ラブロマ好きで何が悪い!
 と、作者さんが後書きで暴走しているとおり、ベタ甘ロマンスで埋め尽くされたこの本は、読み始めたら終始ニヤケっぱなしの危険な一冊になっています。
 6つの短編の中で「ファイターパイロットの君」、「有能な彼女」、「クジラの彼」の三編は、空の中と海の底のスピンオフ作品だったので、どちらも読んだことのある自分にとっては、とても面白かったです。特に高巳と光稀のカップルは、空の中から好きだったので、二人の後日談が読めて凄く嬉しかったです。
 「貴様、認識票をアクセサリー呼ばわりする気か!」
 と、光稀さんが、だんなである高巳を貴様と呼んだり、ドッグタグを娘に付けようと企んでいる場面とか、凄く笑えます。いやあ、何年経っても光稀さんは素晴らしい方だなあ。
 塩の柱から図書館戦争シリーズまでは、怪物の登場や世相の変化による非日常的な世界が描かれていましたが、今回の非日常的な部分は、遠距離や規律によって制限されている恋愛ではないでしょうか。まあ、遠距離恋愛はそんなに珍しいものではないかもしれませんが、自ら体験したいと思う方は少ないはずです。「クジラの彼」、「国防レンアイ」では遠距離恋愛の、「脱柵エレジー」では、規律によって制限される恋愛の辛さや難しさが書かれていて、苦い思いをする場面がいくつかありましたが、まあ、最後はどれもベタ甘展開になるんで、ベタ甘好きな方は一読あれ。
 10日には図書館危機が発売されるので、こちらも楽しみです!