BLACK BLOOD BROTHERS〈S3〉ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (富士見ファンタジア文庫)作者: あざの耕平,草河遊也出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2006/12/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (42件) を見る

 ドラゴンマガジンに掲載された「強い吸血鬼の育て方」、「宝くじ狂想曲」、「力と誇り」、「自由と虚ろ」、「ある吸血鬼の僕」、「いつか来る、その日のために」の6話に、書き下ろしの「失墜の摩天楼」が加わったBBB短編集の三冊目。
 書き下ろしの「失墜の摩天楼」は、短編集の2巻と同様、イブがまだ健在だったころの過去の話。2巻の「古城の一夜」から30年以上経っているだけあって、ジローに対するカーサの態度もずいぶんと変化していました。カーサを見守っているケインは、カーサの心情を察しているようですけど、カーサ自身は自分の変化に気がついていないというところが面白いです。でも、今はまだ面白いと感じられるのでしょうけど、これからイブとジローのことでカーサが苦しみ始めることを考えると、なんだか切ない気持ちになってきます。
 後書きによると、「失墜の摩天楼」では、吸血鬼社会の変遷を書きたかったそうで、豪王フォワード関連の話について少し触れられていましたが、過去の話の割にイブが全く活躍しなかったですし、扱っている題材が地味だったせいか、ちょっと印象が薄い話でした。次の短編集では、第二次世界大戦の頃の話が書かれるのでしょうか?
 短編集は、長編と違ってコメディ色が強くて面白いのですが、時系列が長編と比べて遅れているのが残念だなあ。「自由と虚ろ」と「いつか来る、その日のために」を先に読んでいたら、5巻でゼルマンが取った行動も理解しやすかったと思いますし、6巻で起こったコタロウの変化もインパクトに違いが出てきたと思います。
 BBBは文句なしに面白いシリーズなのに、長編が先に出版されて、短編集で長編と長編の空白を補っているところが、このシリーズの残念なところだと思います。
 短編集か長編が先かは分かりませんが、次の巻も楽しみにしていたいと思います。