戦闘城塞マスラヲ


 お、面白い!
 こんなに自分のツボにはまった本は、「わたしたちの田村くん」以来です。読んでいる最中は笑いが止まりませんでした。
 上京したのはいいものの、生来の眼つきの鋭さが災いして就職に失敗し続け、ひきこもりになったヒデオ。親からの仕送りは止められ、死のうと考えるも、他人に迷惑をかけるのは申し訳ないし、痛いのは嫌だからと、自殺することもできない。
 最初は、こんなのが主人公でいいのかと思っていましたが、自称「電子の精霊」ウィル子に出会い、聖魔杯に参加するようになってから、ずいぶん印象が変わりました。うん、非力ながらも勝ち進んでいくためには、どうするか考えているところは良かったと思いますし、決して他人を嫌っているわけではなく、アパート住民の親睦会に出席したりと、自分の現状をなんとかしたいと思っている様子も好印象でした。
 パートナーのウィル子も魅力的なキャラでした。「なのですよー」という口調と、事あるごとに「ばしっ! ばしっ!」とヒデオにチョップをかますしぐさから、一見可愛いだけのキャラに見えるウィル子。でも、ヒデオと出会う前は、国家機密や他人の貴重なファイルをハッキングをしては食べていたと自分の極悪非道ぶりを語っているように、盛り上がる場面で、「ウィル子、そういうノリは好きじゃないです」と場の空気を読まずに相手を攻撃をする自己中心ぶり。いやー面白い!
 ヒデオ達が参加している聖魔杯では、勝負内容は対戦相手と話し合って決めていいというルールなので、戦闘経験のないヒデオたちは囲碁とかトランプとか、力勝負ではない方法で勝ち進んでいくのかなあと思っていたら、普通にバトルし始めてびっくりしました。しかも、勝負の決着の仕方が普通じゃなく、勝利した後の台詞とか、戦闘中の挙動も面白くてしょうがありませんでした。
 話のテンポも非常によく、後半になるにつれてページをめくるスピードが上がる、上がる。気がついたら、最後のページをめくっていて、物語が終わってしまって残念な気分になりました。あー、早く続きが読みたい。
 このシリーズは、著者の前作「お・り・が・み」の続編に当たるそうなので、課題発表が終わってだいぶ暇になったし、「お・り・が・み」にも手を出してみようと思います。大手のサイトさんでも猛プッシュされていましたし、ネットラジオも聞いていて面白かったので、かなり楽しみです。