半分の月がのぼる空(8)

 感動したっ!
 5巻の後書きで、作者である橋本氏自身が6巻は蛇足気味な話かもしれませんが、と語っていた後、短編集7、8巻の発売を知った時は、まだ出すのかと正直うんざりしていましたが、今巻で「雨(後編)」を読むことができて本当に良かった。
 7巻で「雨(前編)」を読んだ時は、裕一と里香の学生ライフを面白おかしく描いていく程度だろうと考えていた僕が馬鹿でした。
 裕一と里香の絡みはもちろん、司やみゆき、山西などの仲間達との交流を通して見れた青春、これから裕一と里香が歩んでいく道の危うさ、司の夢に憧れる山西や、罪悪感に苦しむ裕一とか、他にも色んな場面や要素が詰め込まれていて、これが半月の魅力だったんだなあと、しみじみ思いながら読んでいました。
 そして「雨(後編)」の最後のシーン、もう何も言うことがありません。これが見れただけで、もういいや。
 「蜻蛉」も読み応えがあったし、「市立若葉病院猥画騒動顛末記」はコメディ色が強く面白かったし、「君の夏、過ぎ去って」は同学年の少女から見た里香が読めて新鮮でしたが、「雨」を読めただけで、十分満足しました。
 小説としての「半分の月がのぼる空」は、これが最終巻ということで、実に名残惜しいですが、橋本氏の次の作品に期待したいと思います。


 追記
 実写ドラマ化されるようですが、僕がドラマを見ることはないと思います。ドラマにはドラマの良さがあるでしょうが、ドラマではこの作品の魅力を発揮することはできないでしょう。