紅〜ギロチン


 ……残念だったとしか言いようがありません。HDDがクラッシュしたことがあって、編集者から早く脱稿するように言われていたのか、物語にいつものようなキレを感じませんでした。
 無邪気な紫、腹黒な夕乃、無愛想な銀子、それぞれのヒロインがそれぞれの味を出していましたが、今回、面白いと思ったのは、真九郎とヒロインの三人が絡む日常パートだけでした。後は、ただひたすら暗く、痛いだけの話。
 今巻では、斬島切彦という強烈なキャラが登場するのにもかかわらず、物語は淡々と進んでいき、最後の戦闘シーンへ。当然、キメ台詞も決まらないし、一巻の最後に真九郎が見せてくれた熱さもなく、盛り上がりに欠けるまま終わってしまいました。なんか、真九郎と切彦の終盤のやりとりも、電波的な彼女、三巻のジュウと雪姫の会話にそっくりでしたし。
 正直、暗い話は読了後に気持ちが沈むので、あまり読みたくないのです。でも、暗いと分かっていても僕が片山氏の作品を読むのは、物語の登場人物が魅せてくれる信念や姿勢が良いなあと思っているからです。
 電波的な彼女では、一般高校生のジュウが、己が無力なことを自覚しながらも事件を解決しようと努力し、事件の真相を知って絶望しても、「何もやらなければ良かった、と思ったことはない」という信念を魅せてくれます。事件のことを考えれば、誰も救われているようには思えないですけど、僕は事件後のジュウ、そしてジュウを支える雨達の姿が見たいから、片山氏の作品を読み続けているのです。
 今回の紅には、そういった片山氏の作品の魅力を感じませんでした。真九郎が何をしたかったのか分からないですし、真九郎がどんな気持ちで動いていたのか理解できなかったです。
 なにか別モノを読まされているような気分でした。
 残念。