悠久展望台のカイ

悠久展望台のカイ (MF文庫J)

　MF文庫Jで、新人賞佳作を受賞した新人さんのデビュー作。
　序盤の雰囲気は良かったと思う。文章が粗く視点が安定しないため、話の途中で混乱するところがあるのが残念でしたが、「世界」と少女の恋が醸し出す雰囲気はとても良かったですし、二人の行く末に期待と不安が高まる展開が出来上がっていました。
　それが、どうして暗い展開に突入してしまうのか。もちろん、ヒロインが「世界」に恋をした時点で、二人がきちんと結ばれることはないだろうなあとは思っていましたが、悲恋モノとダークな話は、別物です。「世界」と少女の一風変わった恋愛を期待していた自分には、中盤以降が急な展開すぎて、話についていけませんでした。「世界」とヒロインもいつの間にか完全に出来上がっていて、恋人になるまでの過程が楽しめなかったのも残念でした。
　ただ、「世界の全ての物語がハッピーエンドだったらいいのに」と、願うヒロインの気持ちが伝わってくる話としては、良くまとまっていたと思います。
　文章は粗いですが、雰囲気は好きになれそうな作品なので、作者さんが受験を終えた一年後には、視点を安定させた恋物語を読ませてもらいたいです。