さよなら妖精

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

 僕は滅多にミステリー小説は読まない。ここ数年はライトノベルばかり読んでいるし、一般の小説を読むのも年に十数冊ぐらいだ。だから、この本を買ったのは本当に偶然のことだった。偶然本屋でこの本を見かけ、色んなブログやサイトさんで紹介されていたのを思い出して、暇だから読んでみようかなあと、軽い気持ちで購入し読み始めた。
 なるほど色んなサイトさんで紹介されていたように、青春要素がたくさんつめられている作品だった。高校最後の部活動、受験、外界に憧れる主人公の気持ちなど、高校最後の年に誰もが経験する内容が描かれていた。その中で僕が一番楽しんでいたのは、マーヤと守屋達の日常だった。マーヤのする何気ない質問に対し、主人公の守屋が時に明快に、時に悪戦苦闘しながら答えてる様を楽しんでいた。「どぼくねんじん!」といった実に青春らしい台詞も出てきたほどだ。そして、いつの間にか、この本がミステリー小説であることを忘れていた。
 そして、だからこそ、ラストはどん底に突き落とされた。あんな結末は予想していなかった。今まで読んできたミステリー小説でもラストで驚くことはあったが、身が震えたのは初めてのことだった。
 振り返ってみると、マーヤは本当に不思議な登場人物だ。いくつもの謎を持ちながら、違和感を感じさせることなく、守屋達の日常に溶け込んでいた。黒髪、黒目と日本人に近い外見でありながら違う人種、そしてユーゴスラビアというあまり耳にしない国名が、マーヤの謎を包み隠すと同時に、マーヤという女の子を特別な存在にしたてあげていた。
 冒頭でも言ったが、僕はあまりミステリー小説を読まない。だから、この本がミステリー小説として完成度が高いかどうかは分からない。でも、凄い小説に出会った。これは確かだと思う。
 凄い小説に出会った。