潮騒 三島由紀夫著

潮騒 (新潮文庫)

潮騒 (新潮文庫)

 周囲が一里にも満たない島で暮らす漁師の新治は、島に帰郷してきた初江と出会う。
 初江に心惹かれる新治であったが、初江は島を牛耳ている宮田照吉の娘、一介の漁師である自分とは全く縁のない人だと新治は諦めようとするが、偶然が偶然を呼んで、二人の距離は急速に縮まっていく。
 二人の仲を快く思わない照吉の妨害、村の名門の生まれである安夫の登場、果たして二人の恋の行方はいかに――
 自然に囲まれたのどかな島で、恋をしたことがなかった青年の心が激しく燃え上がる!



 僕は氏の作品をあまり読んだ事がないので分かりませんが、解説によると、潮騒は三島氏の作品の中でも珍しく普通の青春恋物語を描いたものだそうです。
 実際、解説に書いてある通り、内容は特に難解なわけでもなかったし、非常に読みやすかったです。
 さて昭和30年と言えば、現代よりも女性の権利がないがしろにされていた時代で、男女の交際にも、親の意見が強い影響をもっていた時代です。
 そういった意味で、現代生まれの僕には二人の恋が成就するのか、しないのか、全く予想がつきませんでした。
 終盤に近づくにつれ、二人の恋にも少しずつ希望が掲示されていくのですが、その希望の後ろには絶望がぽっかりと口を開けて待ち構えている展開ばかりだったので、最後までドキドキしながら読めて、非常に面白かったです。
 読者の期待感を最後まで持続させることができる作品だからこそ、名作と言われ現代でも読み続けられるのでしょう。
 かなりお勧めの作品です。