月の盾 (電撃文庫)

月の盾 (電撃文庫)

 護くんに女神の祝福を!シリーズや灰色のアイリスシリーズの著者、岩田洋季氏の読みきり長編。
 心にトラウマを抱える少年と、心を閉ざした少女の交流が凄く丁寧に書かれていた作品。少年や友人達との交流を経て、少女が徐々に笑顔を取り戻していく展開の小説は何作か読んだことがありますが、その中でもかなり心に残るものがありました。
 少年と友人達が少女を救うように、少女との交流が少年や友人達を救っていく場面は素直に感動。ただ、心を閉ざすからには、少女が抱えている闇は深いわけで、ノートからスケッチブック、スケッチブックからキャンバスと、絵を書くことで少女が立ち直っていく微笑ましいシーンの中からも、少女につきまとう危うさが伝わってきて、絶対何かが起こるのだろうなと、終始恐々としながら読んでいました。
 そういった意味ではいい緊張感をもって読むことができましたし、結構分厚い内容でしたが、飽きることはありませんでした。
 物語のラストに少女が見せてくれた一途な思いは最高でした。
 今月も良い本に出会えて良かったです。